労務管理
2025/04/23

飲酒運転の通報があった場合に、職場としてどのような懲戒処分が考えられるのか(ChatGPT4.5作成)

了解しました。社員数30名程度の中小企業経営者向けに、飲酒運転の通報があった場合にどのような懲戒処分が考えられるのかについて、最近の酒気帯び運転に関する最高裁判例や裁判例の傾向を踏まえた、平易で実務に即した内容の記事(約5000字)を作成します。完成次第ご報告いたします。

社員の飲酒運転通報に対する中小企業の懲戒処分と法的対応ガイド

中小企業(社員数30名程度)において、社員の飲酒運転(特に酒気帯び運転)の通報があった場合、経営者は迅速かつ適切に対応する必要があります。本記事では、法律の専門家でない経営者にも分かりやすいように、可能な懲戒処分の種類とその法的有効性、望ましい対応策について解説します。社内規則の整備から通報対応の手順まで、判例や法令に基づくポイントを網羅しています。

最近の酒気帯び運転に関する最高裁判例

まず、飲酒運転と懲戒処分に関連する最近の裁判例として、2024年6月の最高裁判決があります。この事案は市役所職員(公務員)が酒気帯び運転で物損事故を起こして懲戒免職となり、退職金を全額不支給とされたケースです (ポーラースター社会保険労務士事務所 | 懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決)。最高裁(令和6年6月27日第一小法廷判決)は、原審の「退職金全額不支給は違法」という判断を覆し、「本件処分(懲戒免職および退職金不支給)は裁量権の逸脱・濫用とまではいえず違法ではない」と判断しました (ポーラースター社会保険労務士事務所 | 懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決)。つまり、公務員の場合、懲戒免職者への退職金を支給しないかどうかは人事当局(本件では市長)の裁量に委ねられ、社会通念上著しく妥当性を欠く場合でなければ違法とまではいえないと示されたのです (ポーラースター社会保険労務士事務所 | 懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決)。この職員は飲酒運転の態様が悪質で、事故後の報告義務も怠っており、市民の信頼を大きく損なった事情があり、裁量権の逸脱とはいえないと判断されています (ポーラースター社会保険労務士事務所 | 懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決)。

もっとも、上記判例は公務員に関するものです。公務員の場合、懲戒処分や退職金不支給の判断は条例等に基づき広い裁量が認められる傾向がありますが、民間企業の社員の場合は事情が異なります (ポーラースター社会保険労務士事務所 | 懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決)。一般に退職金は「賃金の後払い的性格」を有するとされ、懲戒解雇が有効でも当然に退職金不支給が認められるわけではありません (退職金不支給の争点:裁判例から見る留意すべき事項 | 弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所) (ポーラースター社会保険労務士事務所 | 懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決)。実際に、民間では「永年の勤続の功労を抹消するほどの背信行為」がない限り退職金全額不支給は許されないとの考え方が判例上確立しています (退職金不支給の争点:裁判例から見る留意すべき事項 | 弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所)。例えば過去の最高裁判例(相互タクシー事件)では、勤務時間外の酒気帯び運転で罰金刑を受けたタクシー運転手を懲戒解雇した事案につき、「それまで比較的寛大に懲戒権を行使してきたこと」などを考慮し、懲戒解雇を無効と判断しています (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。このように、最高裁でも過去に飲酒運転を理由とする懲戒解雇の有効性が争われた例があり、処分の適法性は個別事情によって判断されています。

懲戒処分の種類と裁判例の傾向

懲戒処分にはいくつかの種類があり、重い順に「懲戒解雇」(懲戒による解雇)、「諭旨解雇」(自主退職を勧告する解雇)、「出勤停止・停職」(一定期間就業を禁止)、「減給」(賃金カット)、「戒告・けん責」(始末書や厳重注意)などがあります。それぞれ社員に与える不利益の程度が異なり、裁判になった場合の有効性も事情によって判断されています。

**懲戒解雇(懲戒免職)**は最も重い処分で、違反行為の重大性が会社との信頼関係を完全に破壊した場合に検討されます。裁判例を見ると、懲戒解雇が有効と認められるためには処分が社会通念上相当といえる必要があります(懲戒権濫用法理、労契法第15条) (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。例えば、旅客輸送業のバス運転手が勤務後に飲酒運転をして死亡事故を起こしたケースでは、会社の信頼を著しく損ねる行為として懲戒解雇が有効と判断されています (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。一方で、同じ飲酒運転でも状況が違えば判断も分かれます。先述のタクシー運転手の例(相互タクシー事件)では、勤務時間外の酒気帯び運転・物損事故を理由にした懲戒解雇について、「非行の性質は異なるにせよ過去に比較的寛大な処分しかしてこなかった」ことなどを理由に処分は重すぎるとされ、懲戒解雇無効となりました (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。つまり、処分の重さが社内の他の事例と比べて不公平に重すぎる場合、裁判所は懲戒処分を無効と判断しうるのです(平等処遇の原則) (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。

出勤停止(停職)や減給処分といった中程度の懲戒についても、違反行為とのバランスが取れているかが問われます。これらは解雇に比べれば軽い処分ですが、それでも理由や手続が不適切であれば無効とされる可能性があります。もっとも、解雇より軽い処分であれば裁判になるケース自体が少ないため、判例上は懲戒解雇の有効性が主に争点となっている傾向があります。企業としては「いきなり懲戒解雇にせず、減給や停職等の段階的な処分を検討する」ことも重要です。実際に、懲戒解雇が無効と判断された裁判例では「本来は減給や出勤停止程度が相当だったのではないか」と示唆される場合もあります。従って、飲酒運転の内容が軽微であったり初回の違反であったりする場合は、戒告・けん責処分(厳重注意や始末書の提出)や一定期間の出勤停止など、より軽い処分で対処することも検討すべきでしょう。

なお、懲戒処分と退職金の扱いについて補足します。懲戒解雇等の規定に違反した社員には「退職金を支給しない」と就業規則で定めている会社も多いですが、裁判所は退職金の性質に鑑みて慎重に判断しています。判例上、「懲戒解雇が有効だからといって退職金不支給まで当然に有効とはならない」ことに注意が必要です (退職金不支給の争点:裁判例から見る留意すべき事項 | 弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所)。退職金は給与の後払い的・功労報償的な性格を持つため、在職中の功労をすべて帳消しにするほどの重大な背信行為がない限り、全額不支給は許されないというのが一般的な考え方です (退職金不支給の争点:裁判例から見る留意すべき事項 | 弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所)。そのため、懲戒解雇の場合でも、違反行為の悪質性に応じて退職金の一部を支給するよう命じられた例(例:痴漢事件で懲戒解雇となった社員に対し高裁が退職金の3割支給を命じたケースなど)もあります。この点も踏まえ、懲戒解雇を検討する際は退職金条項の運用について専門家と相談することが望ましいでしょう。

業務中と私用中の違いによる処分の正当性

社員の飲酒運転が**「業務中(仕事中)」に起きたものか、「私用中(プライベート)」**に起きたものかによって、会社がとりうる措置や懲戒処分の正当性は大きく異なります。

まず、業務中の飲酒運転であれば、会社の指揮監督下で起きた違反行為ですから、懲戒処分の理由として認められるのはもちろん、内容次第では即時の懲戒解雇も正当化されうる重大な背信行為となります。業務時間中に酒気を帯びて車両を運転する行為は、就業規則違反であると同時に会社の業務秩序を直接乱す行為だからです。例えば営業中に社用車で飲酒運転をして事故を起こした場合や、勤務中に酒気帯びの状態が発覚した場合などは、企業秩序に対する重大な違反と評価され、厳しい処分(停職処分や解雇処分)が比較的正当化されやすいと言えます。実際に、業務中に飲酒運転をした社員を懲戒解雇とし、裁判所もその処分を有効と認めた例が散見されます。企業の社会的信用を守る観点からも、**「勤務中の飲酒運転=重大な規律違反」**との認識で臨むことが必要です。

一方で、私用中の飲酒運転(非勤務時間帯、プライベートでの飲酒運転)の場合、会社がどこまで懲戒権を行使できるかは慎重な判断を要します。基本的に、社員の私生活上の行為は原則として会社の懲戒権の範囲外ですが、会社の社会的信用や業務に影響を与える場合には懲戒の対象となり得ます (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。判例上も、「勤務時間外の飲酒運転は、それが会社の事業と密接に関連する場合などを除き、重い懲戒処分を科すことはできない」と考えられています (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。特に、旅客運送業や貨物運送業など業務上車両運転が中核の会社の場合、たとえ私用中でも飲酒運転は会社の信用失墜行為として重く処分される傾向があります (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。例えば、貨物運送業のドライバーが勤務終了後に私用車で酒気帯び運転で検挙されたケースでは、会社は懲戒解雇とし、裁判所も「運送業務従事者の飲酒運転は企業秩序に反する重大な非行」として処分を有効と判断しました (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。**業務と密接に関連する職種(運転業務担当者等)**であれば、私生活上の違反でも業務上の信頼関係に影響すると見做されるのです。

逆に、会社の事業内容が運送業ではなく、当該社員も運転業務に従事していないような場合は、私用中の飲酒運転を理由とする懲戒処分は慎重であるべきです (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。例えば、一般のオフィスワーカーが休日に飲酒運転で検挙されたとしても、直ちに懲戒解雇などの重処分が正当化されるかは微妙です。その行為が会社の名誉や信用に具体的な悪影響を及ぼした(メディア報道で会社名が報じられた等)場合には処分を検討する余地がありますが、単に法令違反を犯したというだけでは「企業秩序違反」とまで評価しにくいためです。実際、社業と無関係な場面での飲酒運転については「懲戒処分自体が難しい」と指摘する専門家もいます (私生活で飲酒運転をした従業員に対していかなる懲戒処分(懲戒解雇)ができるか? | 労働問題.com)。したがって私用中の事案では、処分を科すにしてもけん責や厳重注意など比較的軽い措置に留め、再発防止指導を行うなどの対応にとどめるケースが多いでしょう。

要するに、業務中か私用中かで会社の対応は変わります。業務中であれば会社として厳正な態度を示す必要がありますし、私用中であれば処分の妥当性を慎重に見極めることが求められます。後述するように、就業規則上の定めや過去の事例との均衡も踏まえつつ、総合的に判断してください。

就業規則の整備と明確な規定の重要性

社員に懲戒処分を科すためには、就業規則(社内規程)に処分の根拠を明示しておくことが不可欠です。就業規則は労働基準法により常時10人以上の労働者がいる事業場で作成・届出が義務付けられており、そこに懲戒事由や処分の種類を定めておくことで、初めて従業員に懲戒処分を適用することができます (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。逆に言えば、就業規則に規定のない行為を理由に懲戒処分を行うことはできません (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。実際に、バス運転手が経歴を詐称したことを理由にけん責処分を受けた事案では、就業規則に経歴詐称が懲戒事由として明記されていなかったため、その処分は無効と判断されています (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。このように「懲戒の対象となる行為」と「科し得る処分」を事前に規則で定めていなければ、いざという時に有効な処分ができなくなってしまいます。

中小企業でも、飲酒運転に関する懲戒事由を就業規則に盛り込んでおくことは極めて重要です。具体的には、「飲酒運転その他刑法・道路交通法違反行為を行った場合」や、「社員としてふさわしくない非行により会社の信用を失墜させた場合」等の条項を定め、懲戒解雇を含む処分があり得ることを明記しておきます。特に営業車両を運転する従業員がいる場合は、「飲酒運転の厳禁」「免許停止・取消時の報告義務」などを定めておくと予防効果も高まります。就業規則の周知も怠らず、社員全員に規則内容を理解させておくことで、規則違反時の処分も「事前に予見可能なもの」として受け止めてもらいやすくなります。万一に備え、就業規則の見直し・整備を日頃から行っておきましょう。

企業の使用者責任リスク(民事・刑事上の責任)

社員の飲酒運転がもたらすリスクとして、会社自体の法的責任にも触れておく必要があります。まず民事上の責任として考えられるのが「使用者責任」です。民法715条は、ある事業のために他人を使用する者(使用者)は、その被用者(従業員)が事業の執行中に第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。したがって、もし社員が業務中に飲酒運転事故を起こし第三者に損害(人身事故による損傷や物的損壊)を与えた場合、被害者から会社も損害賠償請求を受ける可能性があります。例えば営業中に社員が飲酒運転事故で他人にケガを負わせた場合、被害者は運転手本人だけでなく、その雇用主である会社に対しても損害賠償を求めることができます。これは会社に過失がなかったとしても法律上負わされる賠償責任であり、中小企業にとっても看過できないリスクです。

また、自動車事故に関連しては、業務中か否かにかかわらず**自動車損害賠償保障法(自賠法)**に基づく「運行供用者責任」も問題となります。簡単に言えば、会社名義の社用車で事故を起こした場合、その車の所有者である会社は運転者とともに連帯して賠償責任を負う仕組みがあります。仮に社員が私用目的であっても会社所有の車を運転して事故を起こせば、会社が責任を問われる可能性があります。このように、会社は民事上広範な損害賠償リスクを抱えることになるため、社員の飲酒運転を防止することは会社自身を守ることにも直結します。

次に刑事上の責任についてですが、基本的に飲酒運転行為そのものの刑事責任は運転した社員本人が負います。会社という法人が直接、飲酒運転によって刑事罰を科されることは通常ありません(飲酒運転罪は運転者個人の犯罪です)。しかし、会社関係者が飲酒運転を幇助・黙認したような特殊な事情があれば、個人として刑事責任を問われるケースも考えられます。例えば、上司がその社員の飲酒を知りながら「運転して帰るよう」指示・黙認していた場合、上司個人が道路交通法違反(運転容認等)として罰せられる可能性があります。また道路交通法では、酒気帯び運転をする恐れのある者に車両を提供した者や同乗した者にも罰則規定があります(いわゆる車両提供罪・同乗者罪)。企業ぐるみで飲酒運転を黙認しているような実態があれば、社会的な批判のみならず、運輸当局から事業許可の取消しや営業停止など行政処分を受けるリスクもあります。特に運送業などでは、運輸局の指導監督が厳しく、飲酒運転防止の体制整備義務があります。万一違反があれば事業停止処分を受けるなど、会社の存続にも関わりかねません。

以上のように、社員の飲酒運転は会社に民事上・行政上の責任リスクをもたらし得るため、経営者は他人事と捉えず厳正に対応する必要があります。被害者への賠償は高額になる場合もありますし、刑事事件化すれば企業の信用失墜は避けられません。社員への指導教育や社用車の管理を徹底し、飲酒運転「ゼロ」を目指すことが肝要です。

通報を受けた際の対応ポイント(事実確認・本人聴取・公平な手続)

社内外から「社員が飲酒運転をした」という通報や情報提供があった場合、経営者・人事担当者は感情的にならず、冷静かつ公正な手続きで事実関係を確認することが大切です。以下に、通報対応時の主なポイントを解説します。

  • 事実関係の確認:まず最初にすべきは、通報内容の真偽を確かめることです。誰から、いつ、どのような形で情報が寄せられたのかを把握し、裏付けを取ります。飲酒運転の場合、警察の検挙や現行犯逮捕が伴うことが多いため、該当社員が警察に検挙された事実があるか、新聞報道や警察発表がないか確認します。社内の通報であれば、通報者に詳細を聴取しつつ、その内容だけで即断せず客観的証拠(防犯カメラ映像や目撃証言、警察の摘発記録など)を集めます。事実誤認がないよう十分注意しましょう。万一事実無根の疑いがある場合、社員の名誉にも関わるため慎重な取り扱いが必要です。

  • 本人への聞き取り(本人聴取):事実確認の次には、疑われている社員本人から事情を聴くことが欠かせません。通報内容を本人に伝え(可能であれば具体的日時や状況も示し)、本人の弁明や意見をしっかり聞き取る機会を与えます。これは就業規則に定めがなくとも、法的に見て最低限保障すべき手続きとされています (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。どのような問題行為が指摘されているのかを本人に通知したうえで、本人の言い分を公正に聴取してください (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。例えば「○月○日夜に飲酒運転したとの情報があるが本当か?」といった具体的な問いかけを行い、故意の有無や酩酊の程度、当時の状況などについて本人から説明を求めます。この際、本人に黙秘権はありませんが、パワハラ的な詰問にならないよう配慮し、あくまで事実確認の場として冷静に進めます。

  • 公平・公正な手続の確保:懲戒処分を検討する場合、手続の公正さが何より重要です。他の社員の場合と比べて恣意的に重い処分を科そうとしたり、十分な調査もなく処分を決めたりすれば、後に不当解雇だと主張されるリスクが高まります (懲戒処分の種類と選択基準を企業法務弁護士が分かりやすく解説 | 企業法務に強い弁護士-弁護士法人えそら)。したがって、可能であれば社内に懲戒審査委員会のような機能を設け、複数の管理職で協議のうえ処分を決定するといった対応が望ましいです。就業規則で懲戒手続を定めている場合はそのルールに従い、例えば「処分前に人事委員会の議決を要する」のであれば必ず実施します。労働組合がある場合は事前協議や弁明の機会付与について労使協定を確認し、それを遵守します。不公平感を与えないよう、類似事例との処分バランスにも留意しましょう(過去に飲酒運転で処分した社員がいるなら、その時との均衡を図る)。また、処分内容を決める前に本人に最終的な意見陳述の場(「処分予定だが何か弁解や事情があるか?」と尋ねる機会)を与えることも、公正手続きの一環として有益です。

  • 通報者への対応:社内の内部通報制度等で報告があった場合、通報者の保護にも配慮しましょう。通報者が誰なのかが周囲に広まらないよう慎重に取り扱い、調査に必要な範囲を超えて情報を開示しないことが大切です。また、通報内容が事実であった場合は適切に対処する旨を通報者に伝え、仮に誤報であった場合でも通報したこと自体を理由に不利益扱い(報復人事など)をしないと約束します。内部通報制度は社員の違法行為を早期に発見する有効な手段であり、通報者が安心して声を上げられる環境整備も経営者の責務と言えます。

以上のステップを踏むことで、感情的・主観的な対応を避け、事実に基づいた適正な判断が可能となります。特に懲戒解雇など重い処分を下す際には、こうした慎重な手続きを経ていないと裁判で処分無効と判断されかねません。経営者としては「事実確認」「本人の言い分の聴取」「公正な判断プロセス」という三点を常に意識して対応してください。

記録・文書化の重要性

飲酒運転の通報対応から懲戒処分に至るまでの一連のプロセスを記録・文書化しておくことも非常に重要です。具体的には、以下のような書類・記録を整備しておくことが望まれます。

  • 調査経緯の記録:通報を受けてから事実確認を行ったプロセスを時系列で記録します。誰からどのような通報があり、誰が調査を担当し、どのような事実が判明したかをメモや報告書にまとめます。例えば「○月○日◎◎課社員AよりB社員の飲酒運転疑惑について通報。○月○日人事担当者がB社員に事情聴取、本人認否…」という具合に残しておきます。

  • 本人の陳述書・報告書:本人聴取の際に、可能であれば本人に経緯を書面で報告させたり、聴取内容を議事録的に残したりします。本人が事実を認めた場合はその旨、否認している場合はその主張内容を正確に記録します。本人に署名させる始末書や反省文を書かせることもありますが、強制は禁物です。後日「そんなことは言っていない」と争いにならないよう、客観的な書面を用意しておくと安心です。

  • 懲戒処分の決定過程記録:懲戒委員会等を開催した場合はその議事録、関係者の意見具申書、最終的な決定通知書などを残します。誰がどのような判断理由で処分を決定したかを明確にしておくことで、後で社内外から問われた際にも説明が付きます。特に懲戒解雇の場合は、解雇理由を詳細に記載した解雇通知書を交付することが労働基準法で義務付けられています(請求があれば解雇理由証明を発行する必要があります)。処分理由を具体的・客観的に書面で示すことで、本人の納得と社内の理解も得やすくなります。

  • 再発防止策の文書:処分後には、再発防止に向けた取り組みや本人への指導内容も文書化しておきましょう。例えば社内向けに「今回の事案を受け、全社員に対し飲酒運転根絶の再教育を実施した」等の周知文を発信する、対象社員に対して「○月○日付で運転業務から外す」等の措置を講じた記録を残すなどです。これにより、会社が単に処罰するだけでなく建設的な対策を講じていることを示せます。

これらの記録は、後日万が一処分の適法性が争われた場合に会社の対応が適切であったことを証明する エビデンス(証拠) となります。また、同種の問題が将来起きた際の社内参考資料にもなり、組織としてノウハウを蓄積する助けにもなります。中小企業では「記録までは手が回らない」と敬遠しがちですが、トラブル対応の経験を記録として残すことはリスクマネジメント上極めて有益です。

おわりに

社員による飲酒運転の問題は、企業のコンプライアンス意識が厳しく問われる事態です。中小企業の経営者にとっても他人事ではなく、万一通報があった際には適切な調査と判断、そして再発防止策まで含めた包括的な対応が求められます。懲戒処分については、感情に流されず判例や就業規則に照らした冷静な対応を心掛けましょう。処分の種類や重さは事案の内容次第ですが、**「処分の妥当性」「手続の公平性」「規則の整備」**という3点セットを守っていれば、後になって処分の有効性が問題となっても企業側の対応が正当だと主張しやすくなります。

最後に、中小企業では法務部門が充実していない場合も多いため、判断に迷う場合は労務に詳しい弁護士に相談することも検討してください。弁護士であれば最新の判例動向や類似事例を踏まえたアドバイスが可能ですし、万一訴訟になった場合の見通しについても助言を得られます。社員と会社双方にとって最善の解決策を図るためにも、必要に応じて専門家の知恵を借りながら、飲酒運転問題に適切に対処していきましょう。

参考文献・判例(抜粋):

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